小売店の段階的なデジタルオートメーションのススメ

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augmented reality in retail

執筆:Christian FloerkemeierScandit AG共同創業者兼CTO

小売業者が昨今のビジネスニーズを乗り越えるには、まるでエクスプレスチェックアウトで買い物をするように、迅速かつ大規模に自動化(デジタルオートメーション)を進める必要があります。

利幅が縮小し、顧客の要求が厳しさを増すなか、苦境に立たされた小売業者にとって自動化が急務であることはたしかですが、「ビッグバン」方式に代わる手段があります。スマートフォンを使用したコンピュータビジョンと拡張現実(AR)による段階的な自動化は、低コストで迅速にデジタルトランスフォーメーションを実現する方法であり、カスタマサービスの向上とコスト削減を両立できます。

リテールオートメーションのリスクを低減

McKinsey最近の調査によると、一般的な食料雑貨店や大型スーパーは100150ベーシスポイントのマージンプレッシャーに直面しており、衣料品店や百貨店はその2倍も厳しい状況にあります。同コンサルタントは「包括的なオートメーション・プログラムによって、この逆風を大幅に弱めることができる」と提言し、デジタル破壊者であるAmazon Goと食品雑貨大手のKrogerをその手本として挙げています。

この2つの小売業者による取り組みの斬新な魅力に議論の余地はないでしょう。Kroger EdgeEnhanced Display for Grocery Environment)は、クラウドとIoT(モノのインターネット)を利用して、生鮮食品の動的な価格設定を実現し、炭素効率の高い方法でお客様と視覚的にやり取りします。

しかし、この方式の場合、AmazonAmazon Goのために採用したようなインフラやテクノロジーに数百万ドルを投資する必要があります。しかもAmazonには新規建設用地を確保する余裕があり、既存の小売店にはない強みとなっています。

段階的な変革に参加

コンピュータビジョンによってスマートフォンを使ってバーコードを読み取り、文字認識(OCR)で価格と消費期限を確認し、画像認識で商品を認識して、拡張現実 AR)オーバーレイを使用できれば、効果的な代替手段となります。これは段階的方式であり、小売店の従業員を交代するのではなく、スキルを強化することによって、サプライチェーン全体の活動を自動化することになります。しかも、決死の覚悟で大きな一歩を踏み出す必要がないため、投資のリスクを低減できます。

小売業者は、店内にカメラ、計量機、電子棚、通路移動ロボットなどのセンサ装置を設置することによって、店のインフラを取り払って業務を中断させる必要がなくなります。代わりに、スタッフに日常業務用スマートフォンとアプリを支給して、商品のバーコードを読み取ることによって、小売業向けERPシステムなどのデータソースから在庫数量、納期、価格確認などのリアルタイム情報を入手できます。

このようにデジタル装備したスタッフは、迅速な在庫調査、棚管理の最適化、お客様への助言など、いくつもの作業をこなせます。

デジタルトランスフォーメーションの導入により、一つひとつのモバイル端末によるスキャンが、プロセスを再構築してサプライチェーン全体の効率を高める無数のチャンスをもたらしてくれます。1回のスキャンで従業員が棚やトラック、倉庫の中身を検索してフラグの付いた商品を見つけたり、商品の最新情報を読むことができれば、在庫管理や在庫のピッキングが容易になり、迅速化されます。

予算循環の制約から脱却

低コストのスマートフォンを使って小売業務のデジタルによる拡張とスタッフのスキルアップを実現すれば、McKinseyがレポートで「小売業者は予算循環というソフトな圧制と前年の設備投資の複製からなかなか抜け出せない」と強調している大きなボトルネックを克服できます。同コンサルティング会社は、セルフチェックアウトやシェルフスキャンロボットなどのテクノロジーに投資しない大きな理由として、内部の硬直性を挙げています。

しかし、モバイルテクノロジーとソフトウェアベースソリューションの進歩により、巨額の設備投資によるアップグレードを回避し、事業費で調達するソフトウェアソリューションに移行できます。既存のバーコードを活用し、高価な専用のスキャンハードウェアをスマートフォンによるソリューションに切り替えることで、従来ハードウェア、保守、サポートにかかっていたコストを大幅に削減できます。この削減分を再投資して、低価格のソフトウェアベースソリューションとモバイル端末をスタッフ全員に展開することにより、小売業者は大幅な効率アップを果たし、結果としてプロセスの再構築が可能になります。

段階的な自動化を採用した小売業者には、「ビッグバン」方式による業務アップデートを選択した場合に劣らず多大な利益があるため、低リスクで有利です。CoopのPassabeneで明らかになったように、より少ないリソースでコスト削減やカスタマエクスペリエンスの向上といったさまざまな成果が得られます。このスイスの小売業者では、お客様がスマートフォンを使ってセルフチェックアウトできるようにしており、デジタルリレーションシップの構築により、買い物客のスマートフォンにパーソナライズされた特価情報が直接届くためロイヤルティが向上しています。

McKinseyは小売業における自動化のチャンスは店舗業務のみにとどまらないことを重要なポイントとしています。より広く、自動化されたスマートロボットが商品の保管、ピッキング、パレット降ろし、輸送などを、倉庫までの最適なルートを計算しながら行えると指摘しています。スキャン機能とAIに対応したスマートフォンを使用する人間の倉庫係がこうした作業を行うこともできますが、スピードと正確さが最終的な収益に現れます。

スマートフォンにコンピュータビジョンテクノロジーとARソフトウェアを搭載することで、小売業者は自動化のプルーフポイントを体験し、サプライチェーン全体の他のプロセスを段階的に再構築できます。リアルタイムの価格チェック、在庫のピッキング、クライエンテリングなど、小売業者はわずかなコストでMcKinseyのビジョンに参加でき、業務の中断もありません。

段階的な変革を開始して個々のデジタルトランスフォーメーションを実現

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