店内の総入れ替えなしでAmazon Goのようなリテールオートメーションを実現

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Mobile scanning

執筆:Justin Corbell(Scandit Inc.セールス部門担当バイスプレジデント)

2018年にAmazon Go(アマゾン・ゴー)が 一般公開されて以来、小売業者はこのようにスマートな実店舗のビジョンに倣い、それぞれのビジネスで新しいイノベーションやカスタマエクスペリエンスの向上を推進する方法を研究してきました。

とはいえ、Amazon”Just Walk Out” ストアと呼ぶ無人店舗は、消費者や店員が待望するリテールオートメーションやデジタルによる快適なショッピング体験の氷山の一角に過ぎません。テクノロジーとインフラに数百万ドルを費やし、既存のさまざまなタイプの店内スペース、数千カ所の立地といった制約の中で取り組むには、Amazon Goはほとんどの場合、低コストでも現実的でもありません。しかしモバイル・コンピュータビジョンなら、より簡単に導入して、低コストでショッピング体験の変革と最適化を行い、小売業者の利益を押し上げることができます。

段階的なリテールオートメーション:労なくして益あり

スキャンディットは食料品店、ファッション店、家電店、百貨店など、あらゆるタイプの小売業者が、予算内に収まるオートメーションの実現Amazon Goのような体験を提供できるようサポートしています。さらに、店舗レイアウトの再構成に苦労する必要はなく、各棚の重量計を含むデジタルインフラの実装コストも必要ありません。代わりにスマートフォンをはじめ、カメラを内蔵するあらゆるスマートデバイス、ロボットやドローン、必要であればウェアラブル機器でAmazon Goに近いコンピュータビジョンの世界を実現できます。この手法の利点は、低コストであり、人間の従業員を拡張できることにあります。従業員の交代や知識の損失を伴うことなく、買い物客がほぼ例外なく持っているスマートフォンを活用して、快適な店内体験を提供できるのです。

 

スマートフォンをエンタープライズ要件を満たすバーコードリーダー端末として利用できるため、コンピュータビジョンと拡張現実(AR)テクノロジーによって店内およびバックオフィスのワークフローが向上し、大幅なコスト削減とかつてない効率性が実現します。お客様が操作するアプリにもコンピュータビジョンによるバーコードスキャン機能が搭載されているため、セルフレジのレジなしショッピングのようなサービスで快適なカスタマエクスペリエンスを提供できます。例えば、一般的なスマートフォンを所持しているお客様は、それを商品棚にかざして、ヴィーガンやグルテンフリーに対応した商品など、探しているどんな商品も瞬時に見つけることができます。ほかにも、この拡張現実(AR)機能をもちいて、買い物客に役立つ情報(商品レビューや評価、購買履歴に基づくパーソナライズ化したおすすめ商品など)を画面に表示できます。

イノベーションに向けたこの段階的アプローチの最大の魅力は、今すぐ導入できて、業務の中断もなく、既存の投資を足場にできることです(「Think Like Amazon(アマゾンのように思考する)を参照)。はじめの1歩として、Amazon Goのやり方に目を向けてみませんか。

コンピュータビジョンと機械学習でフリクションレス(手間のかからない)ショッピングを推進

Amazon Goの実験は勢いを増しており、現在13カ所以上にオープン。嬉しいことに、Amazonはコンピュータビジョンと機械学習の組み合わせによる効果を検証中です。

最近のMcKinseyレポート「Automation in Retail(小売業における自動化)」には、「Amazon Goの損益影響は高いROIを示唆している。Amazonは待ち時間が短縮されてトラフィックが増え、顧客インサイトを利用して品揃えを最適化し、販促をパーソナライズできた結果、5~10%の売上増を見込める」とあります。”

個々のお客様とその商品を特定し、追跡して、適正な金額を銀行口座から引き落とすオペレーションは紛れもなくスマートです。しかし、数百万ドルのコストがかかり、施設を特注でつくる必要があります。このモデルを他の小売店や小規模店に拡張することは実現不可能でしょう。

Amazon Goの店舗をよく見ると、その理由が分かります。棚の重量センサで商品を取ったとき検出できるようにし、さらにカメラを設置して棚から取ったものが分かるようにすることで、スマートオペレーションが成立しています。ディープラーニングを採用してAmazonのスタッフを実験台にし、過去1年間にわたって数百台の天井型赤外線カメラをトレーニングし、お客様や見た目が同じような商品を区別できるようにしています。

しかも設備投資はカメラとセンサに限りません。小売業者はRFIDが登場した時代に、大部分のコストは棚や天井への専用装置の取り付けやデジタルデバイスおよび機器の配線から生じることを学習しています。このようなリアルタイムのビジネスクリティカルなオペレーションでデータを提供する膨大な数のカメラは、バッテリ駆動式というわけにはいかず、専用の有線による帯域幅を必要とします。

同じものでもアプローチが異なり、予算も大違い

興味深いことに、Amazonはこのように文字通りカメラ、デバイス、センサの大群を導入して、ひとつの目的を達成することにしました。それは行列をなくし、お客様が商品をピックアップしてそのまま店を出られる(Just Walk Out)ようにすることでした。Amazon Goモデルでは、お客様と小売業者にとっての最大の利点はレジの行列と袋詰めの煩わしさを解消することだと想定しています。しかし買い物慣れしたお客様であれば、一番時間を食うのは商品探しであることを知っています。

初めて行く店や町では特にそうです。このよくある状況で、商品検索を重ね合わせて表示し、カメラのビジョンキャプチャで見つけるデータサービスは即座に心をつかみます。消費者にとっては食料品の買い物の時間と手間を省いたり、自分専用の商品選択ができ、小売業者にとっても単位時間当たりの客数と収益が向上します。コンピュータビジョンにより、ほかにも多くの価値を手にすることができます。

例えば、データをキャプチャするためにすべての棚にカメラを設置するより、むしろ1台のカメラを搭載したロボットが通路を定期的に巡回し、棚を撮影して、在庫切れを特定することで、商品の補充を確実にし、小売業者の販売機会を最大限に確保できます。また、カメラを搭載したドローンを巨大倉庫型アウトレットの高い棚の上に飛ばすことによって、在庫確認やお客様の問い合わせへの対応が可能になります。

コンピュータビジョンとモバイルデバイス、ディープラーニングの組み合わせは、小売業者と買い物客にとって最適なソリューションであり、Amazon Goが重要な概念実証(PoC、Proof of Concept)を提示しています。幸い、大方の小売業者は他のさまざまなアプリケーションを利用して、段階的にわずかなコストでショッピングや店舗運営を最適化できます。Amazon Goの店舗は感動的ですが、在庫確認や商品探しといった日常業務については自分のスマートフォンを使うのが一番です。モバイル・コンピュータビジョンを採用すれば、破壊的な「ビッグバン」方式のプロジェクトを必要とせずに、リテールオートメーションの恩恵を得ることができます。セルフスキャンや拡張現実(AR)による店内体験の向上は、買い物客や従業員がすでに当たり前のように持っているスマートデバイスと顧客用アプリで実現できます。

スキャンディットは一般的なスマートフォンを強力なバーコードリーダー端末にし、Amazonのように思考することを促しています。スキャンディットのモバイルスキャンによる小売業でのユースケースについては、こちらの動画をご覧ください。

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