スキャンディットのこれまでの歩み:進化とイノベーションと決意の歴史を振り返る

| ニュース | Samuel Mueller(CEO、共同創設者)Christof Roduner(CIO、エンジニアリング担当VP、共同創設者)、Christian Floerkemeier(CTO、プロダクト担当VP、共同創設者)

Scandit employees basecamp two

想像してみてください。スマートデバイスを物体にかざすと正確にデータをキャプチャして、追跡、学習、説明書の取得、IDや有効期限のチェック、類似商品の検索といった、あらゆる種類のインテリジェントな作業を迅速に行う素晴らしい能力が得られる世界を。これは、10年以上前、Scandit(スキャンディット)の創業当時に私たちが思い描いていた未来の構想です。

当社は今週、Warburg Pincusが主導した1億5,000万ドルのシリーズD資金調達ラウンドを完了したことにより、10億ドルを超える企業評価額となったことを発表しました。そこで、このマイルストーンの達成を記念して、イノベーション、確固たる決意、力強く活発なチーム文化によってそのルーツから成長を遂げた事業の歩みを振り返ってみたいと思います。

scandit founders

昔も今も変わらない明確なビジョン

私たち3人は2009年にチューリッヒ工科大学(ETH Zurich)で出会い、同年中にスキャンディットを立ち上げました。今も全員が当時と変わらず積極的に事業に携わっています。私たちのビジョンが創業当時から揺らいだことはありません。基本的に当社の野心的目標は、さまざまな立場の顧客、従業員、企業の日常に変革をもたらすことにあります。より良いカスタマーサービスの提供から、空港での搭乗手続きの迅速化、正しい荷物の予定どおりの受け取りや、現場スタッフの反復作業の削減まで、独自のソフトウェアによって現実世界とデジタル世界を融合することで、人々が日常の物体を操作できる方法を変えたいというのが当社の願いです。

当初はRFID技術がそのための手段になると考えていましたが、まもなくより効果的な手段があることが明らかになりました。バーコード、テキスト、ID、または物体そのものを読み取ることで馴染みのある物体と交信できる機能を備えた、スマートフォン内蔵カメラの先進技術を利用する方法です。

カメラを搭載したスマートデバイス向けに高度に特殊化されたコンピュータビジョン・プラットフォームを開発することで、モノのインターネット(IoT)の枠組みを日常の物体へと効果的に拡張することができました。

順調ながらも厳しいスタート

多くのスタートアップの例に漏れず、当社の草創期も長く、時に停滞を伴うものでしたが、当時下したいくつかの重大な戦略的意思決定が、現在見られる当社の事業を形づくりました。さまざまな実用最小限の製品(MVP)を用いて検証とイテレーションを行うなかで、当社は起業家精神を競ういくつかのコンテスト(3回は当社の創業地であるスイスの「Venture Kick」、もう1回はNokia主催の2011年「Calling for Innovators」コンテスト)で優勝し、当初数年間の資金を調達することができました。

そして、独自のバーコードスキャン・ソフトウェアの開発とライセンスモデルでの提供開始に乗り出します。並行して、「購入、シェア、比較」を目的とした価格比較アプリの開発も進め、独自のスキャンソフトウェアを組み込みました。同アプリの販促資料には、ソフトウェア開発キット(SDK)を使ってサードパーティアプリにこのソフトウェアを組み込むことができる旨が脚注に小さく記載されました。

これが事業の将来的方向性を生み出すポイントとなったのは確かです。このアプリの人気が高まり、ユーザーが増えるにつれ、当社のSDKのライセンス取得を検討するサードパーティ開発者の数も増えました。世界中の企業から、多様化し続けるユースケースに対するライセンスリクエストが増大したことで、現在の事業の基盤となりました。

2012年までには、欧州のAhold DelhaizeやCoopといったいくつかの有名顧客を獲得しました。これは、このテクノロジーや、今も重要顧客であり続けるお客様のロイヤルティを証明するものといえます。

進化するライセンスプラットフォーム事業が成功を遂げたことから、各業界のお客様の特定ニーズに対応すべく、提供製品とチームの拡充に取り掛かりました。

競争に勝つために初期の技術的障害を克服

バーコードは40年以上変わっていません。そしてその普及状況にもかかわらず、バーコードスキャン・ソフトウェアの完成に向けた挑戦の初期段階で私たちはいくつかの障害にぶつかります。

例えば、ごく初期のバージョンでは、初期スマートフォンのカメラの制約を解消するための独自のバーコードデコード用アルゴリズムが、わずか1万アイテムの製品カタログに限られていたことで、はるかに多くの在庫を扱う小売業者の選択肢にはなりませんでした。また、初期の研究開発プロトタイプでのバーコード読み取りエラー率は10%と高く、実用に耐えなかったため、大規模導入の大きな妨げになるとされました。技術を改善することで当社が唯一克服できるのがこの障害だったので、さっそく改善を行いました。

スマートフォンの人気は高まる一方でしたが、初期のスマートフォンに搭載されたカメラにはオートフォーカス機能がなく、十分とは言えないものでした。同様に、(今なお)スマートフォンでは、従来の専用スキャナーのようにユーザーが照射できるレーザー光を利用できません。

matrixscan

この課題が、考え方を変えてイノベーションに取り組むきっかけとなりました。不鮮明な画像(オートフォーカス機能がない、またはその速度が遅いカメラによって生成された画像など)に含まれるバーコードを確実に認識できるアルゴリズムや、ユーザーがレーザーを照射しなくてもバーコードの位置を認識できるアルゴリズムの開発です。この初期のイノベーションは、1回のスキャンで複数のバーコードを瞬時に読み取ることができるMatrixScanの開発へと発展しました。

教訓を最大限に活用する

これまでの道程では、かなりの失敗と却下も重ねてきました。しかし、「熱意」と「パイオニア精神」というスキャンディットのコアバリューに従って、それらの経験から学び、得られた教訓を自らの進化に役立てました。

創業まもない頃、欧州有数の食料品販売企業のCIOから、当社のテクノロジーが十分な性能を備えることはないだろうと指摘されました。それから私たちは、「どの領域でどうすれば勝てるのか」、「顧客価値を生み出すにはどうすればいいのか」に一層注意を向けるようになります。それを念頭にソリューションの改善を進めたことで、今では欧州の小売業者上位10社のうち7社が当社の顧客となっています。

ほかには、世界最大規模の企業がリリースした消費者向け製品のスキャン性能を向上させるため、同社をサポートできる可能性があり楽しみにしていたものの、結局はわずか数週間後に市場から回収されることになったケースもあります。数か月後、同社から改めて別の製品のサポートを依頼され、今では当社の大口顧客の1つにまで成長しました。捨てる神あれば拾う神ありというわけです。

何をすべきか考え、手段を練る

当社のこれまでの発展は、テクノロジーだけでなく、我々を中心として築いた成長し続けるグローバルチームによって達成されたものでもあります。

早い段階で私たちは、人々が安心して発想を広げたり、実験を行って各自のコンフォートゾーンから抜け出したりすることができる、インクルーシブな場を育てることの重要性に気付きました。私たちの行動が実際の企業や何百万もの人々に真の変化をもたらし、それが大きなやりがいとなります。また、それをどのように達成したかに注目することも好きで、その詳細を大切にしています。

これだけの成功を収めるには、決意と気力と多大な努力が必要でした。この基盤を足掛かりに共に成長し、現在のポテンシャルを活かして今後数々の偉業を達成できることを楽しみにしています。

スキャンディットの現在と今後の展望

今やスキャンディットはSmart Data Capture(スマート・データキャプチャ)分野のリーダーであり、比類ない速度、精度、インテリジェンスによって、従業員、顧客、企業に今までにない体験を提供しています。小売、輸送・物流、ヘルスケア、製造といった業界でお客様と世界中で連携し、サポートすることで、その従業員と顧客、そして各々のオペレーションの日常に変革をもたらしています。

今後も当社は進化し、成長し続けます。ますますスマートフォンを超えて、独自のテクノロジーを自律型データキャプチャ・ソリューションへと応用し、人工知能と機械学習(AI/ML)の利用を拡大することで、従業員の日常をより快適でより楽しいものに変えていきます。現在サポートしている業界のお客様に対する新たなバリューを生み出すとともに、新規顧客へと広げていく予定です。

私たちは、当社を現在の位置まで導いてくれた、「熱意」、「仲間を大事にする」、「パイオニア精神」、「イノベーション」、「楽しむこと」、「やりとげる」という当社のバリューに今後も忠実であり続けます。これらのバリューは、私たちが従業員の中に求める文化の基盤となるものです。その存在なくして当社がここまでたどり着くことはなかったでしょう。

1億人の日常の主役たちにScandit Smart Data Captureの今までにない体験を提供することで、日々それぞれがベストな能力を発揮できるようにすることが、当社の野心的目標です。この目標を達成できる日を楽しみにしています。