世界有数のファッションジュエリー小売企業であるDCKグループは、英国内外の多くのパートナーに直接、または店舗を通じて販売を行っています。パートナーとしては、Marks and Spencer(マークス&スペンサー)、River Island(リバーアイランド)、Tesco(テスコ)、Matalan(マタラン)、Gina Tricot(ジーナトリコ)、Hudson Bay(ハドソンベイ)、ASOS(エイソス)、Next(ネクスト)などが挙げられます。世界中で取引を行い、小売および物流業務に関して幅広い能力を有する同社は、DCKブランドと外部パートナーの両方にサービスを提供しています。DCKは、総合的なビジネスのデジタル・トランスフォーメーションの一環として、スキャンディットのSmart Data Captureを商品のマークダウン・プロセスに統合しました。主体だった紙ベースの手作業に代わりスキャンディットを活用することで、DCKでは、マークダウン・プロセスに要する時間を50%削減するとともに、ビジネス全体に予期せぬ価値がもたらされました。

「当社では効率向上プログラムを実施しており、全社的に非常に大きな変化の時期を迎えています。そしてこの過程には、導入上の数多くの課題が伴います。しかし今回は、当社がここ数年で実施した中で、最もスムーズに展開が完了しました。店舗スタッフは、今回の変革を好意的に受け入れてくれました。それは彼らが心から求めていたものだったからです。浸透も早くて、良好なフィードバックも寄せられました。」

DCK 業務開発責任者 Oliver Simons 氏

課題

ファッション業界において25年以上の実績を持つDCKは、小売アクセサリー業界のエキスパートであり、毎年、3,500以上の小売店向けに2,000万点を超える商品を生産しています。DCKは効率改善とプロセスのデジタル化に向けて、小売ソリューションビジネス全体にわたり、デジタル・トランスフォーメーション(DX)の取り組みを展開することを決定しました。以前は、業務においても店舗スタッフ間のコミュニケーションにおいても、多くのプロセスが手作業で、紙ベースでした。そのため、場合によっては、データの収集や業務に関する現状把握に大幅な遅れが生じ、意思決定が既に古くなっている情報に基づいてなされるケースもありました

DCKは、店舗スタッフと商取引担当スタッフ全体で1,200名の従業員を抱えており、その多くは、英国およびアイルランド内で、それぞれの地域を対象とした店舗に勤務しています。そしてその多くがアルバイトや契約社員であり、柔軟な働き方を求める人にとっては最適な環境です。さらにDCKでは、クリスマスなどの繁忙期には、季節労働者を雇用しています。こうした雇用モデルと居住地域等の特性から、大規模な採用活動が継続的に行われていますが、採用活動は新型コロナウイルスの感染拡大と英国のEU離脱が引き起こした労働力不足によって、さらに大きな課題となりました。DCKでは、従業員の手作業を止めさせて、デジタル化で効率を最大化する必要があると認識していました。

具体的な問題の1つは、実施に多大な時間を要する商品のマークダウン対応でした。このプロセスでは、数千のSKU(Stock Keeping Unit、最小在庫管理単位)からなる紙のスプレッドシートが、店舗スタッフに送付されます。各店舗でリストを受け取ると、スタッフはその店舗の棚にある商品のバーコードとスプレッドシートを相互に照らし合わせながら、マークダウン業務を行う必要がありました。リストにある数千のSKUに対して確認作業を行い、適切な値下げラベルを貼るのです。これには非常に時間がかかる上に、属人的なミスも起こりがちでした。

さらに問題なのは、来店客が商品価格を確認したいときにセルフスキャンできるように設置された店舗内スキャナを、従業員がマークダウン対応に使用する場合があることでした。しかしこうしたデバイスは、一括スキャンに対応した設計ではなく、処理速度が遅い上、古い情報を表示することも多々ありました。また、以前のデバイスが機能するのは、ホストコンピューターの価格管理システムで値下げ情報が更新された場合のみであったため、適切なタイミングで正しい値下げ価格が表示されなかったために販売の機会損失もよくありました。そして従業員は、こうしたデバイスの操作のトレーニングも受けていませんでした。

DCKでは最近、BYOD(Bring Your Own Device、私有端末の業務利用)ポリシーを導入しました。その主な目的は、店舗スタッフとのコミュニケーションに役立てるとともに、新しい従業員が変化する環境でも素早く業務に着手できるようにすることでした。BYODの導入からDCKが学んだのは、従業員は自身のスマートフォンにいくつもの業務用のアプリをインストールしたがらないということでした。また店舗によっては、Wi-Fiやモバイルデータ通信が課題となっており、オフラインでも機能するソリューションが必要でした。

DCKでは、スタッフが高速・高精度のスキャンソリューションを利用できる方法を見出す必要がありました。効率化により業務の時間を節約し、従業員の全体的なエクスペリエンスを向上させるのです。

ソリューション

DCKはITの観点から、業務を合理化するソリューションをチームに提供することで、運用のDXを実現しました。店舗内での課題や、店舗スタッフが業務用アプリをBYODの端末にインストールしなくないという思いに対処すべく、DCKは、Scandit Web SDKを介してSmart Data Captureを統合しました。同社の革新的なウェブアプリは、スキャンディットのパートナーであるTSSが構築したもので、これを使用すれば、店舗スタッフはスマートフォンのショートカットからブラウザにアクセスして、バーコードをスキャンできます。ネイティブアプリをダウンロードする必要はありません。データはキャッシュとして保存され、店舗内や移動中でオフラインの場合でも、保存されたデータを利用できます。

DCKの業務開発責任者であるOliver Simons氏は、こう述べています。「BYODポリシーを導入したことで、変革が迅速に進み、各店舗という離れたところにいるスタッフとの距離が縮まりました。当社では新しいテクノロジーと働き方を採用することができました。たとえばスキャン機能は、当初のロードマップではずっと先だと考えていましたが、今回の変革の実施により、とても迅速に実現に至りました。」

スキャンディットとの協業で進めた全プロセスに要した時間は、構築から展開までわずか8週間でした。Simons氏は、こう語ります。「新しい仕組みの社内展開は、非常に迅速かつスムーズに行えました。年末の繁忙期に向けたマークダウン対応にも間に合いました。それぞれ離れたところにいるチームメンバーに新たなテクノロジーを導入するのは難しいこともありますが、ここ数年間に実施したどのプロジェクトと比べても、今回は最も容易に展開できたと言えるでしょう。店舗スタッフは、今回の変更を好意的に受け入れてくれました。それは彼らが心から求めていたものだったからです。浸透も早くて、良好なフィードバックも寄せられました。」

立ち上げ以降、問題は一切発生していません。スキャンディットは2万機種に及ぶスマートフォンと互換性があり、店舗スタッフが所有するあらゆるデバイスにも対応できるためです。

成果

DCKグループは、総合的なDXの取り組みとスキャンディットのSmart Data Captureの導入によって、かつてない成果と予期せぬメリットを得ることができました。

店舗スタッフ全体で、年間で50万時間以上を業務に費やしており、そのうち10%が商品のマークダウンに充てられていました。スキャンディットの導入によりスプレッドシートの利用を止めることで、多大な効率化につながりました。商品のマークダウンに要する時間は、およそ50%短縮されました。これは年間で1万時間以上の削減に相当し、その時間を他の付加価値を生み出す業務へと、より有効に活用できます。加えて、すべての商品をスキャンできることでマークダウン・プロセスでのミスが減少し、商品の割引に関して大幅な経費節減にもつながりました。

DCKにとっては、従業員のエンゲージメントと定着を促進する上でも、とても良い影響がありました。これは、売り手労働市場においては特に重要なことです。これまで、店舗スタッフにとって多くの業務が技術的なサポートなしでは難しく、苦労の多いものでしたが、この新しい働き方はとても受け入れられやすいものでした。DCKでは、エンゲージメントの向上が見られただけでなく、テクノロジーを活用して働くことに前向きな人材の雇用にもつながりました。

スキャンディットの導入は、店舗スタッフの仕事に対する満足度の向上にもつながりました。スキャンディットを導入した最初の週、あるチームメンバーが本社にメールを送りました。内容はこうです。「DCKで19年働いてきましたが、今までこんなに興奮したことはありません!素晴らしい!本当に感動しました!すべてが、がらりと変わりました!」

Simons氏が説明するように、こうした前向きな感情は、将来的な変革プロジェクトにもプラスになります。「店舗スタッフは、スキャンディットを本当に気に入っています。他の新たなテクノロジーを採用する上でも役立ちました。というのも従業員たちは、私たちが取り組む新しい働き方は、自分たちにとって良いものだと信じてくれるからです。」

DCKはここ2年間、スキャンディットを含めた、総合的なDXの取り組みを進めてきました。これにより、販売チームでは完全なペーパーレス化が実現し、より持続可能で環境にやさしい業務運営につながっています。

今後についてDCKは、スキャンディットがもたらす新たな可能性に胸を躍らせています。Simons氏は、こう述べています。「より多くのスキャンを行うことができれば、販売チームの改善をより図ることができます。サプライチェーンの業務を支援するために既に導入したものに加え、当社には、スキャンと拡張現実(AR)を通じて商品やコンセプトを実現できるという、大きなチャンスがあります。今後、コンプライアンス、素材、トレンドなど、より多くの情報を取得できるようになるでしょう。」

DCKは同社で実現したリテールDXのさらなる可能性に大きな期待を寄せており、既に、カナダ、北欧、南欧、アジアなど国際的な商品のマークダウン対応に、スキャンディットを展開し始めています。

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