セルフスキャンのテクノロジーとセルフスキャンによる非接触型ショッピングへの準備

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Self scanning retail

執筆:Christian Floerkemeier(Scandit CTO兼共同創業者)

新型コロナウイルスの世界的流行により、「非接触型ショッピング」のニーズが生まれています。これを新たなきっかけとして、食料品店はセルフスキャンの技術と「セルフスキャン」によるサービスを展開しています。

小売業者にはお客様と従業員を守る責任があるため、安全確保に向けて、非接触型ショッピングの選択肢を提供することによって人との接触を最小限に抑えています。

簡単で迅速なモバイル・セルフスキャンは、すでに大手スーパーマーケットや小売チェーンで採用が進んでおり、買い物客にも高く評価されています。

買い物客はモバイル端末よるセルフスキャンとセルフチェックアウトを選ぶ

自分のスマートフォンを使ったセルフスキャンは、時間を節約したい買い物客に最適です。

SOTI社の調査によれば、買い物客の66%はモバイル・セルフスキャンとセルフチェックアウトを選択しており、67%がモバイルテクノロジーを採用する小売店のほうが時間を節約できると回答しています。

「非接触型ショッピング」に向けて準備しましょう。対人距離を保ち、安心して入店できるようにするには、クリーンネス(衛生)と非接触に重点を置く必要があります。

つまり、訪れるお客様は自分のスマートフォンを使って製品の選択、情報収集、購入を行い、従業員はスマートフォンアプリで日常業務を遂行することになります。

迅速で簡単なフリクションレス(手間のかからない)ショッピング

店舗で迅速かつ簡単な「フリクションレス(手間のかからない)ショッピング」が可能になるとあって、ここ数年はセブン-イレブン、Ahold Delhaize、Albert Heijn、Coop Denmarkといった多くの一般大衆向けチェーン店がセルフスキャンに投資しています。

Global Market Insights社によれば、世界のセルフチェックアウト・ショッピング市場は2024年までに40億ドルを上回ると予測されています。ポストコロナには、この額が間違いなく増えるはずです。

高性能なコンピュータビジョンソフトウェアを適切に採用すれば、カメラが内蔵されたあらゆるスマートデバイスを有用なバーコードスキャナへと変えることができます。小売業者はこの技術を利用して、買い物客が自分のスマートフォンでバーコードを読み取り、セルフチェックアウト端末かアプリで決済できるようにしています。

このセルフスキャンのモバイルアプリによる手法で、Amazon Goのような24時間年中無休のレジなし店舗も実現できます。

スイスの商社Valoraはその好例で、買い物客はアプリでIDを登録することによって会員になり、入店やセルフスキャン・ショッピングが可能になります。この場合、登録をスムーズに行えるよう、スキャンソフトウェアにはバーコードを読み取る機能に加え、文字認識(OCR)およびID検証機能も必要とされます。

待ち時間をなくし、空間を広げて、収益を確保する

新型コロナ以降、小売業者は待ち時間を短縮する方法を模索しています。現在、入店待ちは当たり前になっていますが、このような行列をつくるとお客様を逃したり、店舗の単位時間当たりの客数が減ることになるため、言うまでもなく収入は減少します。

したがって、空間を広げ、各買い物客が1回のショッピングで店内に滞在する時間を短くする必要があります。セルフスキャンショッピングがツールとして役立つことは明らかであり、小売業者は迅速なショッピングによる恩恵を受け、お客様も買い物を楽しめます。

とはいえ、従来のハンディターミナルの場合、買い物客には紛れもなく衛生上のリスクがあり、小売業者にとっても使用するたびに適切な消毒を管理するという余計な手間がかかります。このため、使用を中止した小売業者も出ています。

清潔な非接触型ショッピングの新たな需要により、現在弊社には小売業者が既存の計画を繰り上げ、バーコード読み取りソフトウェアを使用してセルフスキャンアプリを短期間で展開できるようサポートしてほしいとの依頼が寄せられています。

新型コロナ以降、既存のお客様の一部では、顧客のスマートフォンを使用したセルフスキャンサービスによる店内取引の件数が倍増しています。

より多くの買い物客を維持・獲得する

セルフスキャンサービスは以前から変わらず、顧客エンゲージメントを高める強力な手法とされています。このようにして、デンマークの小売業者Coop Denmarkはセルフスキャンアプリを利用し、効果を上げています。

このアプリによって、セルフスキャンテクノロジーの主な利点はすべて享受できます。加えて、店側はデータキャプチャ機能を利用して、パーソナライズされた特価、販促、割引等の情報で常にお客様の心をつかむことも可能です。

結果として、Coop Denmarkではアプリのダウンロードが160万回に達し、それを毎日約25万人が平均4分間利用しています。

データドリブンな意思決定が進む今、企業はセルフスキャンから得た顧客行動のデータを貴重なソースとして分析を行うこともできます。

追跡アプリと定番の店舗KPIの併用は、さまざまな領域のパフォーマンス評価に適した方法であり、来店客数、レジ待ち時間、購買パターン、バスケットサイズ、収益、コスト、顧客満足度をすべてキャプチャして測定できます。

行動を起こそう

セルフスキャンサービスの導入を成功させるには、専門家のアドバイスが必要です。あらゆる顧客サービスと同様に、ユーザエクスペリエンスが鍵を握ります。

言うまでもなく極めて重要な要素は、スキャンソフトウェアのパフォーマンスであり、顧客が使用するどんな携帯機器モデルでも初回から常に正常に動作する必要があります。

リアル小売店は、オンラインショッピングと競争し、安全確保という新たな需要を満たすために、デジタルトランスフォーメーションの加速を余儀なくされるでしょう。

結局のところ、新しい非接触型社会では、これまで以上に現実世界とデジタル世界を融合する必要性が高まっているのです。